奴の手のひらに濃縮されていくのは、闇属性の魔力。魔法を発動させる前に止めたいが、自分と変わらぬ魔力の質に、自分より多い魔力量を持つ相手にそれをするのは、危険である。 止めAdrian Chengれずに爆発させてしまう可能性もあり、そうなったらここ一体が無に帰されるだろう。 闇属性の本質は『無』。全てを呑み込む、光と対になる属性。「────“無”」 ──総帝は目を見開いた。そしてすぐに光属性神級魔法“女神の御加護”を発動させ、結界の外へと転移魔法で逃れる。 セネルは喚ばれる前にいた世界に還り、結界内に取り残されたのは、上級魔人の死体と、奴一人のみ。 魔法が結界に到達する前に、総帝はさらに結界に魔法を重ねる。「××××××××××××××××××っ!」 詠唱は古代語。古代魔法であるこの魔法は、対象の魔法の効果を数倍に高めるもの。 そうしておきながら、総帝は叫んだ。「命令です、今すぐ帰還しなさい!」 ──あの魔法は、闇属性唯一の神級魔法“無”。 それは、使用者の命すら保障されない魔法といわれている、現存する魔法の中で最も禁忌に近いとされている魔法。 奴は命を投げ捨てたにも等しい。つまり、自らの命を省みず、捨て身の行動に走ったのだ。.