"えてスルーし、

「お待たせしました福田課長。もう大丈夫だと思います」

イスから立ち上がって、この時初めて彼の顔を見て言葉をかけた。

唖然とする顔を隠しもせずにこちらに向け、そっとその視線をわたしのうしろに据えられたノートパソコンに向けた彼が

「もう?」

たったその一言だけつぶやいた。

「失礼します」

自分に任された仕事が終わったことを確認すると、頭を下げて自分の席に戻って、再び先ほどの仕事を再開させた。

お昼にチャイムが鳴り響くと、わたしのスマホも震えている。

チャイムと同時に震えだすってどういう事?

『茉優?』

表示画面には同期で親友の茉優。

『お昼行ける?』

すでに外にでもいるのか、少し後ろが騒がしい。

『行けるよ。どこにいる?』

『1階。エントランスにいるから下りて来てよ』

チャイムが鳴る前にエレベーターに乗り込んでいたようだ。

『了解。今から行く』

話しながら立ち上がると、引き出しから小ぶりのバッグを取り出し

「お昼行って来ます」

誰にともなしに声をかけて部署を出た。

「お待たせ」

混み合ったエレベーターを降りると、すぐ目の前の大きな丸い柱に背をつけて立つ親友茉優の姿を発見した。

「行こう!」

腕を取られて外に出ると、つい昨日木枯らし一号が吹いたとニュースで言ってた通り、少し肌寒くなったような気がする。

「秋になったね。先週くらいまでは""暑い!暑い!""って文句言ってたのに」

「そうだね。もう来月はクリスマスか。早いなぁ」

すでに街の中はクリスマスの飾りつけをしているお店も結構ある。

ハロウィンの飾りとクリスマスと混同している店もあって賑やか過ぎ。

何処に行くとも決めてはいないけど、二人の足はその行く先をわかっているかのようにお揃いの場所に向かって進んでいる。

「あ!真澄ちゃんに茉優ちゃん、いらっしゃい」

わたし達の母親世代だろう女将さんの威勢のいい声に導かれるように、会社から徒歩5分の定食屋に入って行った。

「ねえ。今夜飲みに行こうよ」

本日の日替わり定食の生姜焼きを頬張る茉優は、肉が残る口の中に白飯もかっ込んでいる。

「今夜?いいけど、またなにかあった?」

わたしはお肉よりもお魚が食べたいと小あじの南蛮漬け定食。

「ちょっと!わたしがまた振られたと思ってる?」

恋多き女・茉優。

いつでもどこでも恋をしていたいお年頃だと自分で謳い文句にでもしているようだ。

「違うの?」

それ以外でのお誘いなんて滅多にない。

付き合った報告はメール連絡だし、合コンのお誘いも、なにかのお願い事もすべて電話かメールかのどちらか。

唯一顔を合わせるのは、こうやってお昼を一緒にする時か、夜は振られてやけ酒を飲むのに付き合わされるぐらい。

「ち・・・・・違わない、けどさ・・・・・」

鼻の頭にしわを寄せて不機嫌さマックスに答えてくれた。

つい最近までの茉優のお相手は、たしか3つくらい年下だったかな?

わたし達は、今年入社5年目を迎えた25歳。

となると相手の男の子は22歳の今年新社会人になったばかり。

「あの可愛い優男、仕事に持ってかれたか・・・・・」

新入社員ともなれば、惚れた腫れたと騒いでもいられない。

必死で仕事について行くので手いっぱいで、茉優が先にキレたか相手が根を上げたか。

「今夜6時半、いつものバーに集合!いいね!」

わたしのつぶやきを拾われてしまったようだ。

行くとも言ってもいないのに強制的に行く事が決まってしまったようだ。

「ご馳走様でした」

最後にオバちゃんに出してもらったお茶を啜って、二人で手を合わせて頭も下げる。

「さて、戻ろうか」

いつも置い"